ブレーカーの配線工事には、分岐ブレーカーの増設だけでなく、分電盤からコンセントまで新しい配線を引く専用回路工事や、100V・200Vの変更、分電盤自体の交換などがあります。
工事内容は使用する家電や既存設備によって異なるため、最初に分電盤や配線の状態を確認することが重要です。
本記事では、ブレーカーの配線工事が必要になるケースや主な工事内容、費用の目安、業者を選ぶ際のポイントについて解説します。
ブレーカーの配線工事を検討している方は、適切な業者選びに役立ててください。
ブレーカーの配線工事とは分電盤から電気を安全に送るための工事
ブレーカーの配線工事とは、住宅の分電盤からコンセントや電気設備まで電線をつなぎ、必要な回路を設ける工事です。
ブレーカーは単に電気を入れたり切ったりする装置ではなく、回路へ過大な電流が流れた際に電気を遮断する役割があります。
そのため、新しいブレーカーだけを取り付ければよいわけではなく、使用する電気機器や回路容量に適した配線を組み合わせることが重要です。
ブレーカー増設と配線工事はセットになる場合が多い
分電盤へ分岐ブレーカーを1つ追加しても、その先に電気を届ける配線がなければ新しい回路として使用できません。
例えばエアコン用の専用回路を設ける場合は、分電盤へブレーカーを追加し、そこからエアコン設置場所の専用コンセントまで新しい配線を引く方法があります。
分電盤に空きがあり配線距離が短ければ比較的シンプルですが、空きがない場合は増設用ボックスや分電盤そのものの交換が必要になるケースもあるでしょう。
分電盤には漏電ブレーカーや分岐ブレーカーなどがある
住宅の分電盤には、住宅全体を保護する主幹側のブレーカーや漏電を検知する漏電ブレーカー、各部屋や設備の回路を守る分岐ブレーカーなどがあります。
配線工事では、使用予定の電気機器に必要な容量や現在の回路構成を確認し、適切なブレーカーへ接続します。
既存回路へ家電を追加するだけでは容量が不足する場合もあるため、分電盤の空きスペースだけでなく、主幹容量や既存配線の状態まで確認することが必要です。
ブレーカーの配線工事が必要になる主なケース
ブレーカーの配線工事は、ブレーカーが落ちた時だけに行うものではありません。
エアコンやIHクッキングヒーターなど消費電力の大きい設備を追加する際や、1つの回路へ家電が集中して頻繁にブレーカーが落ちる場合にも必要になることがあります。
以下では、ブレーカーの配線工事が必要になるケースを解説します。
特定の部屋でブレーカーが頻繁に落ちる
キッチンや洗面所など、毎回同じ分岐ブレーカーだけが落ちる場合は、1つの回路に接続している家電の合計使用量が多すぎる可能性があります。
例えば電子レンジや電気ケトルなど消費電力の大きい家電を同時に使うと、その回路の容量を超える場合があります。
このようなケースでは、契約アンペアを大きくするだけでは解決せず、新しい回路を設けて負荷を分散する配線工事が必要になることがあります。
工事前に原因が過負荷なのか漏電なのかを確認してください。
エアコンなどの専用回路を新設する
エアコンなど消費電力の大きい電気機器では、分電盤から専用コンセントまで独立した回路を設ける場合があります。
専用回路にすると、ほかの家電と同じ回路へ負荷が集中するのを防ぎやすくなります。
実際の工事では、分電盤の空きブレーカーを確認したうえで、設置場所まで電線を引き、機器に適したコンセントを設置する流れが一般的です。
分電盤に空きがない場合は、ブレーカーだけでなく分電盤側の改修が必要になることもあります。
IHや200V対応機器を導入する
IHクッキングヒーターや一部の大型エアコンなどでは、200Vの電源を使用する機種があります。
現在のコンセントが100Vだからといって、コンセントだけを200V用へ交換すれば使用できるわけではありません。
分電盤側の電源方式やブレーカー、配線の太さ、機器の仕様などを確認したうえで適切な回路を構成する必要があります。
既存設備によっては電圧切り替えだけで対応できることもありますが、新しい専用回路や分電盤の改修が必要な場合もあります。
分電盤の回路数が足りない
新しい専用回路を増やしたくても、分電盤のブレーカーがすべて使用されている場合があります。
その際は、既存分電盤の横へ増設用ボックスを設ける方法や、必要な回路数を備えた新しい分電盤へ交換する方法などを検討します。
特に築年数が長い住宅では、設備を追加するたびに小規模な改修を繰り返すより、分電盤全体を更新したほうが適しているケースもあるでしょう。
ブレーカーで行われる主な配線工事
「ブレーカーの配線工事」といっても、すべて同じ作業ではありません。
新しい分岐ブレーカーを追加するだけの場合もあれば、分電盤から別の部屋まで電線を引いたり、100Vから200Vへ変更したりする場合もあります。
工事内容によって必要な部材や作業量、費用が異なるため、見積もりでは「ブレーカー工事一式」だけではなく、具体的に何を施工するのか確認することが大切です。
分岐ブレーカーを増設する
分岐ブレーカーの増設は、既存の回路とは別に新しい電気回路を作る際に行われます。
分電盤に空きスペースがあれば、対応するブレーカーを設置して新しい配線を接続する方法があります。
ただし、物理的に空きがあるからといって必ず増設できるわけではありません。
主幹側の容量や配線方式、増やしたい設備の消費電力なども確認する必要があります。
回路を追加する目的と使用機器を伝え、設備全体を確認してもらったうえで施工しましょう。
分電盤から専用コンセントまで新しく配線する
専用回路工事では、分電盤から使用場所まで1本の回路を新設します。
配線方法には、壁や天井裏などを通して電線を見えにくくする隠ぺい配線と、壁面などにモールを設置して通す露出配線があります。
隠ぺい配線は仕上がりをすっきりさせやすい反面、建物の構造によって施工が難しくなる場合があります。
一方、露出配線は施工しやすいケースがありますが、配線経路が見える点を理解しておきましょう。
100Vから200Vへ変更する
200V対応の家電を導入する際には、分電盤側で電圧を切り替え、必要に応じてブレーカーやコンセントを変更します。
ただし、住宅へ供給されている電気の方式や既存配線によって工事内容は異なります。
古い住宅では200Vを利用するために、分電盤より上流側を含む工事が必要になるケースもあるでしょう。
また、200Vへ切り替えた回路へ100V専用機器を誤って接続すると故障につながるため、使用機器に合わせたコンセントや表示も重要です。
分電盤そのものを交換する
回路を追加するスペースがない場合や、既存の分電盤が古い場合は、分電盤全体の交換を提案されることがあります。
新しい分電盤へ交換すれば、必要な回路数を確保すると同時に、主幹ブレーカーや漏電ブレーカーなどもまとめて更新できます。
ただし、単純なブレーカー追加より工事範囲が広くなるため、費用も上がる傾向です。
住宅用の遮断器には経年劣化があり、長期間使用している設備では更新も含めて検討することが大切です。
ブレーカーの配線工事にかかる費用
ブレーカーの配線工事には全国共通の公定価格があるわけではなく、配線距離や建物構造、分電盤の状態などによって費用が変わります。
1回路のブレーカー増設と配線工事で1万5,000円~数万円程度としているケースもありますが、現場条件によって金額には幅があります。
正確な料金は現地調査後の見積もりで確認しましょう。
ブレーカー1回路の増設は配線距離によって費用が変わる
既存の分電盤に空きがあり、比較的短い距離へ1回路を増設する工事について1万5,000円~3万円程度を目安としているケースがあります。
ただし、これは全国一律の相場ではありません。
分電盤からコンセントまでの距離が長い場合や、壁内へ配線を通す必要がある場合は作業量が増えます。
また、ブレーカー本体やコンセント、出張費などが別料金になる事業者もあるため、見積もりの際に確認してください。
分電盤交換が必要になると費用が高くなりやすい
新しいブレーカーを追加するスペースがない場合や、古い分電盤の更新を同時に行う場合は、単純な回路増設より費用が高くなる傾向があります。
標準的な分電盤交換を5万円~10万円程度としているケースもありますが、回路数や主幹容量、追加する設備によって変動します。
金額だけを見て判断せず、分電盤本体、配線、ブレーカー、撤去費など何が見積もりへ含まれているか確認しましょう。
配線方法や建物の構造も費用に影響する
同じ回路を増設する場合でも、分電盤から設置場所までの距離や、壁・天井の構造によって工事費は変わります。
壁の表面へモールを取り付ける露出配線より、壁や天井の内部へ通す隠ぺい配線のほうが施工の手間が増える場合があります。
また、鉄筋コンクリート造などでは配線経路が限られるケースもあるでしょう。
見積もりを依頼する際は、料金だけでなく露出配線か隠ぺい配線かも確認すると仕上がりを想像しやすくなります。
ブレーカーの配線工事を行う流れ
ブレーカーの配線工事では、いきなり分電盤へ新しいブレーカーを取り付けるのではなく、既存設備の調査から始めます。
現在の分電盤に空きがあるか、主幹容量に余裕があるか、設置予定の家電にどの程度の電力が必要かなどを確認し、配線経路を決めます。
その後に見積もりを確認し、必要なブレーカーや電線、コンセントなどを使用して施工するのが基本的な流れです。
分電盤と設置予定の機器を確認する
現地確認では、分電盤の回路数や空きスペース、主幹容量、既存配線などを確認します。
さらに、エアコンやIHなど設置する機器の定格電圧や消費電力を調べ、新しい回路が必要か判断します。
分電盤だけを見て工事内容を決めるのではなく、実際に何を使用するための工事なのかを確認することが重要です。
また、設置場所までどの経路で配線できるかも調査し、露出配線になるのか壁内へ通せるのかなどを決めます。
見積もりで工事内容と追加料金を確認する
工事前には、ブレーカー本体、電線、コンセントなどの部材費と作業料金、出張費などを確認してください。
「配線工事一式」としか記載されていない場合は、どこからどこまで配線するのか、何mまで基本料金に含まれるのかなどを聞いておくと安心です。
壁内へ電線を通せず露出配線へ変更する場合や、分電盤の空きがなく交換が必要になった場合など、追加費用が発生する条件についても事前に確認しましょう。
施工後にブレーカーと回路の動作を確認する
配線工事が完了した後は、ブレーカーを入れて新設したコンセントや設備へ正常に電気が供給されるか確認します。
また、使用する機器に合った電圧になっているか、ブレーカーが正常に作動するかなども重要です。
登録電気工事業者には、一般用電気工事について施工場所や配線図、検査結果などを管理する義務があります。
工事後は、どのブレーカーがどの部屋や機器につながっているのか分かるよう表示も確認しておきましょう。
ブレーカーの配線工事をDIYで行うのは避ける
ブレーカーや住宅内の固定配線は、知識があれば自由に工事できるものではありません。
住宅などの一般用電気工作物等に関する電気工事には、第一種または第二種電気工事士の資格が必要です。
ブレーカー増設や配線接続を無資格で行うことは避け、専門業者へ依頼してください。
ブレーカーの追加や固定配線の接続には資格が必要
分電盤へ分岐ブレーカーを追加したり、ブレーカーからコンセントまで固定配線を接続したりする作業は、一般家庭で自由に行えるDIYの範囲ではありません。
一般家庭や商店などの屋内配線設備は一般用電気工作物等に該当し、その電気工事には第一種または第二種電気工事士が必要です。
市販のブレーカーや電線を入手できたとしても、自身で分電盤内部を加工したり配線したりしないでください。
誤った配線は感電や火災につながるおそれがある
配線工事では、ブレーカーの容量と電線の太さ、使用する機器などを適切に組み合わせる必要があります。
接続が不十分であれば端子部分が発熱したり、回路容量に合わない施工によって配線へ過大な負荷がかかったりするおそれがあります。
不完全な電気工事によって感電や火災などが発生する危険を防ぐため、電気工事士の資格制度を設けているのです。
見た目だけで正常か判断できないため、施工は有資格者へ任せましょう。
ブレーカーの配線工事を依頼する業者の選び方
ブレーカーの配線工事を依頼する際は、料金の安さだけでなく、電気工事を適切に行える体制が整っているかを確認しましょう。
電気工事業者には登録制度があり、一般用電気工事を扱う登録電気工事業者は、営業所ごとに主任電気工事士を置くなどの義務があります。
現地確認を行ったうえで工事内容や追加費用を説明し、見積もりの内訳を提示する事業者を選ぶことが大切です。
必要な資格や電気工事業の登録を確認する
住宅のブレーカーや固定配線に関わる工事を依頼する場合は、実際の作業者が必要な電気工事士資格を持っているか確認すると安心です。
また、電気工事業を営む事業者についても、電気工事業法に基づく登録や届出の制度があります。
登録電気工事業者には、主任電気工事士の設置や必要な器具の備え付け、帳簿管理などの義務が定められています。
依頼先の会社情報や施工体制もあわせて確認しておきましょう。
見積もりの内訳と工事範囲を確認する
同じ「ブレーカー増設工事」でも、分電盤にブレーカーを追加するだけなのか、新しいコンセントまで配線するのかで作業内容は大きく異なります。
そのため、見積もりではブレーカー本体、配線、コンセント、施工料金などの内訳を確認してください。
また、分電盤に空きがなかった場合や予定していた配線経路を利用できなかった場合に、どのような追加工事が必要になるかも聞いておきます。
複数の業者へ同じ条件で見積もりを依頼すると内容を比較しやすくなるでしょう。
賃貸住宅でブレーカーの配線工事をする場合は管理会社へ確認する
賃貸マンションやアパートで専用回路を増設したい場合は、電気工事店へ直接依頼する前に管理会社や大家へ確認してください。
分電盤や壁内部の固定配線は建物の設備に含まれる場合があり、無断で工事すると退去時の原状回復などで問題になる可能性があります。
希望する設備と必要な工事内容を伝え、許可を得てから進めてください。
200V化や専用回路の増設も無断で行わない
新しいエアコンやIHなどを使用するために200V回路や専用コンセントが必要になっても、賃貸住宅では自身の判断だけで工事しないようにしてください。
分電盤のブレーカー追加だけでなく、壁への穴あけやモール設置など建物へ変更を加える可能性があります。
また、退去時に元の状態へ戻す必要が生じる場合もあるでしょう。
工事会社へ見積もりを依頼する前後で管理会社へ相談し、施工方法や費用負担、退去時の取り扱いまで確認しておくことが大切です。
まとめ|ブレーカーの配線工事は設備に合わせて有資格者へ依頼しよう
ブレーカーの配線工事には、分岐ブレーカーの増設、専用回路の新設、100V・200Vの変更、分電盤交換などがあります。
工事内容は、追加したい家電の種類や分電盤の空き、既存配線の状態によって異なります。
特に、特定の回路だけ頻繁にブレーカーが落ちる場合や、エアコン・IHなど消費電力の大きい設備を追加する場合は、新しい専用回路を設けることで負荷を分散できる可能性があります。
また、費用については全国共通の公定価格がなく、配線距離や施工方法、建物の構造などによって変動します。
なお、住宅のブレーカー増設や固定配線の接続などには電気工事士の資格が必要です。
自身で分電盤内部を加工せず、必要な資格と施工体制を備えた電気工事業者へ相談し、既存設備に合った方法で工事を進めましょう。