突然、家の電気が消えて分電盤を確認したら「漏電ブレーカー」が落ちていた、という状況に戸惑っていませんか?
漏電ブレーカーが落ちたのは、家のどこかで電気が漏れている(漏電)という危険なサインの可能性があります。
慌ててスイッチを戻すと、感電や火災につながるおそれもあるため注意が必要です。
本記事では、漏電ブレーカーの役割から、落ちるおもな原因、ご自身でできる安全な復旧手順を解説します。
漏電していないのに落ちる場合の対処法や、漏電を放置するリスクにも触れていますので、ぜひ参考にしながら安全かつ冷静に対処してください。
漏電ブレーカーとは?その役割とほかのブレーカーとの違い
分電盤には、見た目が似たブレーカーがいくつか並んでいますが、それぞれ異なる役割を持っています。
漏電ブレーカーが落ちた場合、まずはその役割を正しく理解することが冷静な対処の第一歩です。
ここでは、以下3つについて解説します。
- 漏電を感知して火災や感電を防ぐ
- アンペアブレーカーとの違い
- 安全ブレーカーとの違い
それぞれの役割を明確にし、適切に対応しましょう。
漏電を感知して火災や感電を防ぐ
漏電ブレーカーは、その名のとおり「漏電」を検知するための安全装置です。
電気が本来の回路(電線)から外れて漏れ出す(漏電)と、漏電ブレーカーがそれを瞬時に感知し、自動で電気の供給を遮断します。
なお、漏電ブレーカーは漏電の遮断をおもな役割としますが、過電流が発生した場合にも回路を遮断する機能を兼ね備えています。
もし漏電が発生したまま電気が流れ続けると、人が触れた際に感電したり、漏れた電気が熱を持って火災を引き起こしたりする重大な事故につながりかねません。
漏電ブレーカーは、こうした感電や火災といった最悪の事態を防ぎ、私たちの生命や財産を守るために設置されている、重要な役割を担っています。
アンペアブレーカーとの違い
アンペアブレーカーは、電力会社との契約アンペア数(例:30Aや40Aなど)に基づいて、家全体で使用できる電気の「総量」を管理するブレーカーです。
一般的に分電盤の左端に設置されており、ほかのブレーカーよりも大きいことが特徴としてあげられます。
アンペアブレーカーが落ちる原因は「電気の使いすぎ」です。
たとえば、エアコンや電子レンジ、ドライヤーなどを同時に使用し、契約アンペア数を超える電流が流れた場合に作動します。
漏電を検知する漏電ブレーカーとは、落ちる原因と守る目的が根本的に異なります。
安全ブレーカーとの違い
安全ブレーカーは、分電盤の右側に複数並んでいる小さなブレーカーです。
これは「配線用遮断器」とも呼ばれ、「台所」「居間」「エアコン」など、家の中の各部屋や回路ごとに電気を管理しています。
安全ブレーカーが落ちる原因は、おもに2つあります。
1つは、その特定の回路での「電気の使いすぎ」です。
もう1つは、その回路に接続された家電製品の故障などによる「ショート(短絡)」です。
安全ブレーカーが作動すると、その回路(部屋)の電気だけが切れます。
家全体の漏電を監視する漏電ブレーカーとは異なり、特定の回路を個別に保護する役割を担っています。
漏電ブレーカーが落ちるおもな原因
漏電ブレーカーが落ちた場合、必ずどこかに原因があります。
おもな原因として、以下4つが考えられます。
- 配線や絶縁体の経年劣化
- 家電製品の故障や水濡れ
- 雨漏りや湿気による漏電
- コンセント周りのホコリや緩み
それぞれ見ていきましょう。
配線や絶縁体の経年劣化
建物が古い場合、壁の中や天井裏を通っている電気配線が原因となることがあります。
電気配線は、電気が外に漏れないように「絶縁体」と呼ばれるビニール素材などで覆われていますが、この絶縁体も時間とともに劣化していきます。
とくに築年数が経過した物件では、絶縁体が硬化してひび割れたり、もろくなったりすることも。
その損傷した部分から電気が漏れ出し、漏電ブレーカーが作動します。
また、ネズミなどの害獣が配線をかじって傷つけることも漏電の一因となります。
家電製品の故障や水濡れ
漏電の原因として多いのが、日常的に使用している家電製品の故障や水濡れです。
洗濯機や冷蔵庫、食器洗い機や温水洗浄便座、電気ポットなど、水まわりで使用する家電は注意しなければなりません。
これらの製品は内部に水が浸入しやすく、それが電気回路に触れることで漏電を引き起こします。
電源コードが家具の下敷きになって損傷したり、ペットがかじったりして内部の電線が露出した場合も同様です。
特定の家電製品を使い始めたタイミングでブレーカーが落ちる場合は、その製品が原因である可能性が高いといえます。
雨漏りや湿気による漏電
「雨の日になると、決まってブレーカーが落ちる」「梅雨の時期だけ、たまに落ちる」という場合、雨漏りや湿気が原因である可能性を疑うべきです。
屋根や外壁から侵入した雨水が、壁の内部を伝って電気配線やコンセント、照明器具の裏側に接触すると、そこから漏電が発生します。
雨漏りは目に見える場所で起こるとは限らず、天井裏や壁内部で静かに進行しているケースも少なくありません。
また、屋外に設置されたエアコンの室外機や給湯器、屋外コンセントなどが雨水にさらされて劣化し、漏電につながることもあります。
コンセント周りのホコリや緩み
コンセントと電源プラグの間に溜まったホコリが、漏電の原因になることがあります。
これは「トラッキング現象」と呼ばれる危険な状態です。
ホコリは空気中の湿気を吸いやすく、湿気を帯びたホコリが電気の通り道となってしまいます。
結果として、プラグの刃の間で放電(ショート)が起こり、最悪の場合は発火して火災に至りかねません。
この過程で電気が漏れるため、漏電ブレーカーが作動することがあります。
冷蔵庫の裏やテレビの裏など、普段掃除しにくい場所のコンセントはとくに注意が必要です。
>>関連記事「トラッキング現象とは?火災の原因から対策まで解説」はこちら
漏電ブレーカーが落ちたらどうする?安全な復旧手順
漏電ブレーカーが落ちたとき、慌ててスイッチを「入」に戻すのは危険です。
家の中のどこで漏電しているかが分からないまま復旧させると、感電や火災のリスクが高まります。
ここでは、安全に漏電箇所を特定するための手順4つを紹介します。
- すべてのブレーカーを切る
- アンペアブレーカーと漏電ブレーカーを入れる
- 安全ブレーカーを1つずつ入れる
- 漏電箇所を特定する
詳しく見ていきましょう。
すべてのブレーカーを切る
漏電箇所を特定するための最初の手順は、分電盤にあるすべてのブレーカーのスイッチを「切(OFF)」にすることです。
これにより、家全体の電気回路をいったんすべて遮断した状態にします。
この作業は、どの回路が漏電の原因となっているかを調べるための準備です。
操作は必ず乾いた手で行い、足元が濡れていないかなども確認してください。
アンペアブレーカーと漏電ブレーカーを入れる
すべてのブレーカーを「切」にした状態から、アンペアブレーカー(主幹ブレーカー)と中央にある「漏電ブレーカー」のスイッチを「入」にします。
アンペアブレーカーがないご家庭では、漏電ブレーカーのみを「入」にしてください。
もし、この段階で漏電ブレーカーが「入」にならない、または「入」にしてもすぐに落ちてしまう場合は、問題が深刻である可能性があります。
家の大元の配線(主幹配線)や漏電ブレーカー自体が故障していることも考えられるため、ご家庭での対処は困難です。
それ以上操作を行わず、直ちに専門の電気工事店に連絡してください。
安全ブレーカーを1つずつ入れる
漏電ブレーカーが無事に「入」の状態になったら、次の手順に移ります。
先ほどすべて「切」にした安全ブレーカーを、今度は端から「1つずつ」ゆっくりと「入(ON)」にしていきます。
このとき、焦って一度に複数のスイッチを入れたり、素早く操作したりしないでください。
1つスイッチを入れたら、数秒待って漏電ブレーカーに変化がないかを確認します。
この作業を繰り返すことで、家の中の回路を1つずつ順番に電気に接続し、どの回路に問題があるかを調べていきます。
漏電箇所を特定する
安全ブレーカーを1つずつ「入」にしていく過程で、ある特定のスイッチを入れた瞬間に、再び漏電ブレーカーが落ちることがあります。
その「漏電ブレーカーが落ちる原因となった安全ブレーカー」こそが、漏電している回路です。
漏電箇所が特定できたら、まずその原因となった安全ブレーカーのスイッチを「切」に戻してください。
その後、漏電ブレーカーを再度「入」にし、残りの問題ない安全ブレーカーをすべて「入」に戻します。
これで、漏電している回路以外の電気は復旧可能です。
漏電していないのに漏電ブレーカーが落ちる原因は?
上記の手順で調べても漏電箇所が特定できない場合、実際には漏電が発生していない可能性もあります。
漏電ブレーカーは高感度な安全装置であるため、漏電以外の要因で誤作動を起こすことがあるからです。
漏電していないのにブレーカーが作動するおもな原因として、以下3つを解説します。
- ブレーカー自体の故障や寿命
- ノイズや雷サージの影響
- 一時的な過電流の発生
これらの原因を知ることで、原因不明のブレーカートリップに対応しましょう。
ブレーカー自体の故障や寿命
漏電ブレーカーも電気製品の一種であるため、寿命があります。
長年使用しているブレーカーは、内部の電子部品やセンサーが劣化し、正常に機能しなくなることがあります。
その結果、実際には漏電していないにもかかわらず、わずかな電流の変化を「漏電」と誤って検知してしまい、ブレーカーが作動(誤作動)してしまうためです。
とくに分電盤が脱衣所など湿気の多い場所に設置されていると、劣化が早まる傾向があります。
漏電ブレーカー自体の故障が疑われる場合は、専門業者に点検を依頼しましょう。
ノイズや雷サージの影響
漏電ブレーカーは微弱な電流(漏電)を検知するために高感度に設計されていますが、その反面、外部からの電気的な「ノイズ」に弱いという特性があります。
代表的なノイズ源は「雷」です。
近くで落雷があると、「雷サージ」と呼ばれる強力な異常電圧やノイズが電線を通じて家の中に侵入することがあるからです。
このノイズを漏電ブレーカーが「漏電」と誤認識し、作動してしまいます。
雷が鳴った直後にブレーカーが落ちた場合は、このケースが考えられます。
インバーターを搭載した家電(エアコンなど)が発するノイズに反応することもあるため、注意が必要です。
一時的な過電流の発生
漏電ブレーカーは本来「漏電」を検知するものです。
しかし、機種によっては「過電流」や「ショート」を検知する機能をあわせ持っているタイプもあります(漏電遮断器付配線用遮断器)。
この場合、特定の回路で一時的に大きな電気が流れたり、ショートしたりした際に、先に漏電ブレーカーが作動するケースも珍しくありません。
厳密には漏電していなくても、複数の家電製品が同時にわずかな漏れ電流を発生させ、その合計が作動基準値を超えてしまうことで落ちる場合もあります。
ブレーカーの漏電を放置する危険性
漏電ブレーカーが落ちたにもかかわらず、原因を特定しないまま無理やりスイッチを上げ下げして使い続けることは危険です。
漏電は目に見えないため軽視されがちですが、深刻な事故の引き金となります。
漏電を放置すると、以下のような深刻な事態を招く可能性があります。
- 感電事故のリスク
- 火災発生のリスク
- 電気代が高くなる可能性
危険性を正しく理解し、迅速な対応を心がけましょう。
感電事故のリスク
漏電を放置するうえで、もっとも恐ろしい危険が感電です。
電気が漏れている家電製品やコンセント、スイッチなどに気づかずに触れてしまうと、その漏れた電気が人体を通過して地面へと流れようとします。
これが感電です。
人体に流れる電流がわずか1mA(ミリアンペア)でもピリッと感じ、20mAを超えると筋肉が硬直し、自力でその場から離れられなくなることがあります。
さらに50mAを超えると、短時間で命を落とす危険性もあります。
とくに、体が濡れているお風呂場やキッチンなどでは、より少ない電流でも重篤な事故につながりやすいため、警戒が必要です。
参考資料:厚生労働省職場のあんぜんサイト「感電」
火災発生のリスク
漏電は、火災の直接的な原因にもなります。
電気が漏れている箇所は、電気抵抗によって熱を発生しやすくなるからです。
この熱が長時間続くことで、近くにあるホコリや建材、カーテンといった可燃物に引火し、火災を引き起こします。
トラッキング現象も、ホコリを介した漏電が発火につながる代表例です。
漏電ブレーカーは、このような火災を未然に防ぐためにも作動します。
ブレーカーが作動したことは、すでに火災の一歩手前の危険な状態であった可能性も示唆しています。
電気代が高くなる可能性
漏電とは、電気が本来の目的(家電製品を動かすなど)以外に「漏れ出している」状態です。
つまり、誰も使っていない電気が、24時間絶えず地面や建物の構造体に向かって流れ続けていることになります。
これは、水道管から水が漏れ続けているのと同じ状況です。
結果、漏電の程度によって「最近あまり電気を使っていないはずなのに、電気代が急に高くなった」という形で現れ、漏電の疑いを持つことがあります。
業者に依頼すべきケースとは
漏電ブレーカーが落ちた際、ご自身で復旧作業を試みることは大切ですが、無理は禁物です。
電気の扱いは一歩間違えると重大な事故につながるため、少しでも「おかしい」と感じたら、すぐに専門の電気工事店に相談しましょう。
とくに、以下のようなケースでは迷わず専門家に連絡してください。
- 原因が特定できない場合
- ブレーカーが何度も落ちる場合
これらのサインを見逃さず、安全を最優先に行動しましょう。
原因が特定できない場合
安全な復旧手順(安全ブレーカーを1つずつ入れていく方法)を試しても、どの回路が原因なのか特定できない場合があります。
また、すべての安全ブレーカーを切った状態でも漏電ブレーカーが「入」にならない場合、問題は分電盤自体や、壁の中を通る大元の配線にある可能性が高いです。
こうしたケースでは、漏電箇所を特定するために「絶縁抵抗計(メガテスター)」などの専門的な測定機器が必要になります。
これらは電気工事士の資格を持つ専門家でなければ扱えません。
無理に探ろうとせず、速やかに業者に調査を依頼してください。
ブレーカーが何度も落ちる場合
一度は復旧したように見えても、短時間のうちに何度も漏電ブレーカーが落ちる場合も、危険なサインです。
これは、漏電の原因が解消されていない、あるいは複数の箇所で問題が発生している可能性を示しています。
雨が降ったり止んだりする天候と連動してブレーカーが落ちる場合、あるいは特定の時間帯に落ちる場合などは、原因が複雑化していることが考えられます。
このような不安定な状態での電気の使用は危険です。
漏電が常態化している可能性が高いため、早急に専門業者による点検と修理が必要です。
まとめ:ブレーカーの漏電トラブルは原因究明と正しい対処が重要
漏電ブレーカーが落ちた際は、感電や火災を防ぐためにも、安全な手順での原因特定が不可欠です。
もし「原因が特定できない」「ブレーカーが何度も落ちる」といった場合は、無理をせず専門家へご相談ください。
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